淑瞳会のこれまでの歩み

淑瞳会―この10年―
     片上 千加子

今年で第29回目を迎えた兵庫県眼科医会淑瞳会は、9月24日、ホテルオークラ神戸において、藤堂勝巳会長はじめ6名の男性理事の先生方、また大阪、京都、岡山、島根、香川の府県からの代表女性医師の先生方にご出席いただき、第1部の学術講演会には91名、第2部の懇親会には69名の参加者で、開催されました。

学術講演会では、まず、兵庫医大講師の木村亜紀子先生に「成人斜視の治療~複視と見た目が問題です~」のタイトルで自験例に基づいたわかりやすいお話を、続いて、理化学研究所網膜再生医療研究チームリーダーの高橋政代先生に「iPS細胞と網膜色素変性」について世界の最先端のお話を拝聴しました。夢のまた夢と思っていた視細胞移植が実現に近づいているとの素晴らしいご講演で感動いたしました。

第2部の懇親会は、まずトランペットとピアノによるミニコンサートを楽しみました。理事の先生方にご挨拶をいただいた後、和やかな雰囲気の中、「桃花林」のフレンチ中華の会食が始まりました。会の半ばには淑瞳会委員である深森史子先生が「東日本大震災におけるJMAT活動報告」をされ、震災直後の悲惨な状況のスライドに胸が締め付けられる思いでした。その後、他府県の先生方、神戸大学、兵庫医科大学の新入女性医局員、新規開業の先生方のご紹介をさせていただきました。立場や年齢を超えて交流を深め、和気藹々とした雰囲気の中、盛会のうちに無事終えることができました。

淑瞳会は、10年前の兵庫県眼科医会創立50周年記念号の会報に掲載された二宮俶子先生のご報告によりますと、昭和57年7月、当時の兵庫県眼科医会会長の有沢先生のご発案で、会員の3分の1を占める女性医師の悩みや眼科医会への要望を汲み上げようと、女医会が開かれたのが第1回目だそうです。

当時、県眼科医会理事であられた伊藤須美子先生と二宮俶子先生が第4回まで担当されました。第4回は勤務医の先生方にも積極的に参加を呼びかけ、勤務医と開業医間で互いの要望について話し合いが行われたとのことです。

昭和61年の第5回から、兜坂里江先生と伊田幸子先生が理事となられ、素敵な企画と美味しいお料理でリフレッシュするという方向に転換され、その路線が安井多津子先生、繪野尚子先生にも受け継がれました。

私自身がこの淑瞳会に関わらせていただいたのは、平成元年の第8回で、県立尼崎病院の松村美代先生をオーガナイザーに、神戸逓信病院の林倫子先生、甲南病院の繪野尚子先生、市立加古川病院の文順永先生、県立塚口病院の吉田晴子先生、神戸大学の私がパネリストとなり、シンポジウム形式で「緑内障―症例をもとに診断と治療を考える」に参加させていただいたのがきっかけとなりました。

この平成元年の会に出席されていた有沢会長から、「会の名称を変えたら」とご提案があり、新名称を会員から募集し多数の応募がありましたが、協議の結果、有沢会長の出された「淑瞳会」に決定しました。

平成10年には、「淑瞳会」は県眼科医会親睦福祉部から独立して委員会組織となり、さらに発展を遂げました。

平成14年から23年までのこの10年間に淑瞳会は確実に歩みを進め、プログラムを以下に記しますが、趣向を凝らした魅力的な企画が目に付きます。

 

平成14年(第20回)

講演:「癒しの医療」 日本医科大学助教授 高柳一江先生
懇親会:ジャズピアニスト松永孝志氏によるピアノコンサート
元宝塚宙組 夢月真生様によるミニリサイタル


平成15年(第21回)

講 演:「いつも おしゃれで うつくしく」コシノヒロコ様
懇親会:リリコ・スピント・テノール歌手 加藤ヒロユキ氏
コンサート&トーク「今宵はカンツォーネで乾杯!」


平成16年(第22回)

講 演:「子育ては今」甲南女子大学人間科学部国際子ども研究センター 稲垣由子先生
懇親会:鈴木秀美氏によるチェロ演奏


平成17年(第23回)

講 演:ミニレクチャー
   「涙道疾患の診断と治療」県立塚口病院眼科 宮崎千歌先生
   「オキュラーサーフェスの再生医療」神戸海星病院眼科 片上千加子先生
懇親会:神戸大学眼科 関向大介先生らによるセッション
   (サックス、ピアノ、キーボード、パーカッション)


平成18年(第24回)

講 演:「時代の気分・世代の気分」サントリー次世代研究所部長 佐藤友美子様
懇親会:ミニコンサート
    「どこかで耳にしたオペラ・オペレッタを召し上がれ」
    ソプラノ:田代睦美氏 テノール:田代恭也氏 ピアノ:中村文美氏


平成19年(第25回)

講 演:「加齢黄斑変性症の治療」 神戸大学眼科 中西頼子先生
    「ドライアイの診療のコツとポイント」 兵庫医大眼科 細谷友雅先生
    「乳癌検診の重要性について」県立加古川病院外科部長 佐古田洋子先生
懇親会:アンサンブル135演奏会
    大江浩志氏(フルート)杉山雄一氏(ヴィオラ)
    池添三輪子氏(ヴァイオリン)髙橋乗子氏(チェロ)


平成20年(第26回)

講 演:「OCT を臨床で上手に活用するには」神戸大学眼科 楠原仙太郎先生
    「この眼底所見をどう読むか?」  神戸大学眼科 本田 茂先生
懇親会:ミニコンサート  イヴ・ピアッジェコンサート


平成21年(第27回)

講 演:「女性眼科医が考える光老化」みずさわ眼科 水澤志保子先生
    「太陽からの紫外線:物理学者の視点で」
        立教大学理学部物理学科教授 山本 博聖先生
懇親会:ミニコンサート  ソプラノ歌手 松岡万希氏


平成22年(第28回)

講 演:眼科疾患の最近のトピック
    「眼表面の話」  神戸海星病院眼科 片上千加子先生
    「眼底の話」   県立尼崎病院眼科 喜多美穂里先生
懇親会:ロックバンドCutoru-chanコンサート


平成23年(第29回)

講 演:Ⅰ.臨床のトピックス
    「成人斜視の治療―複視と見た目が問題です―」兵庫医大眼科  木村亜紀子先生
    Ⅱ.特別講演
    「iPS細胞と網膜色素変性」 理化学研究所 高橋政代先生
懇親会:ミニコンサート  常盤井大志氏(トランペット)白川佳那子氏(ピアノ)


 


淑瞳会委員長は、平成16年の第22回まで安井多津子先生が務められ、平成17年の第23回から繪野尚子先生に交代されましたが、伝統は受け継がれ、委員長の指揮のもと、若い準備委員の先生方が何度も会合を重ね、細かいところまで気を配って準備し、当日の受付から進行まで委員のみですべてを担当する「手作りの会」を何よりも大切にされてきました。

今回から私が委員長を仰せつかりましたが、この伝統ある淑瞳会を今後も大切にはぐくみ、さらに発展させていくためにはどうすべきか、委員の先生方と検討を重ねてきました。

現在兵庫県では約700名の眼科医会会員のうち女性は約300名と、40%を超えており、男女同数となる日もそう遠くないと思われます。

女性医師は、女性という性の特質上、家事や育児や介護の責務を負いながら、また男性に比べ種々のハンディを抱えながら、勤務しなければなりません。男性と同等に評価されるためには3~4倍の努力を必要とするといっても過言ではないと思います。

そこで、女性医師がその英知を結集し、先輩後輩を超えて親睦を図りつつ各領域の最新のトピックスを学びながら、時代の流れに遅れを取ることなく、女性の能力を最大限に活かすべく切磋琢磨することは、きわめて有意義ではないでしょうか。

これまでの淑瞳会の伝統を大切に守りつつ、女性医師がその能力をフルに発揮できるようお役にたてる会として、淑瞳会を位置づけたいと思いました。

具体的には、①プロフェッショナルとして生涯にわたり研鑽をつみスキルアップを図る、②会員同士が出身大学や世代を超えて交流を深め、困った問題があれば互いに助け合い、女性医師の要望を医会へと汲み上げる、を目標に淑瞳会を発展させていければと考えております。

そのために、せっかく貴重な時間をやりくりして参加していただくのですから、第1部は眼科の最先端の知見にキャッチアップできるよう、学術講演会を今後も行っていきたいと思っています。第2部の懇親会では、素敵なコンサート、おいしいお食事で、日ごろの疲れを癒す楽しいひとときを過ごしていただきたいと思います。さらに世代や立場を超えて互いに親睦を深めながら、育児や家事、診療に役立つ情報交換を行い、女性医師の悩みや要望を眼科医会へと届ける「橋渡し役」を淑瞳会が担い、女性医師の活性化に繋げることができればと願っています。

皆様のより一層のご支援ご協力をいただきながら、さらに魅力ある有意義な淑瞳会を目指します。

来年は30周年、素晴らしい記念の会になるよう、委員一同、素敵な企画を練っておりますので、ご期待ください。